副鼻腔炎

副鼻腔炎

副鼻腔炎の症状

副鼻腔炎は、鼻の周囲にある副鼻腔と呼ばれる空洞に炎症が起こる疾患です。副鼻腔は鼻腔と小さな穴でつながっており、頬骨、両目の間、額の下などにある骨に囲まれた空洞で、左右4対、合計8個あります。炎症が4週間以内の場合は「急性副鼻腔炎」、3カ月以上続く場合は「慢性副鼻腔炎(蓄膿症)」と診断されます。

副鼻腔炎には以下のような主な症状があります。

・粘り気のある鼻水(急性では膿性の緑や黄色、慢性では白い粘調な鼻水)
・鼻づまり(粘膜の腫れやポリープにより空気の通り道が狭くなる)
・後鼻漏(こうびろう:鼻水がのどの奥に流れる症状)
・頭痛や顔面の痛み(炎症による圧力で生じる)
・嗅覚障害(匂いを感じにくくなる)
・咳や痰(後鼻漏が原因で発生することがある)

炎症を起こしている副鼻腔の場所によって、痛みの場所も異なります。前頭洞の炎症ではおでこの痛みや頭が重い感じ、上顎洞では頬の痛みや歯の痛み、篩骨洞では眉間や目の奥の重い痛み、蝶形骨洞では後頭部の痛みや頭が重い感じがします。

さらに、長期間の症状により、全身倦怠感、睡眠障害、集中力低下などの二次的な症状も現れることがあります。特に慢性的な場合、日常生活に大きな支障をきたすことがあります。

大人の副鼻腔炎(ちくのう症)

副鼻腔炎について

副鼻腔炎の原因

副鼻腔炎の発症には様々な要因が関わっています。タイプ別に原因を見ていきましょう。

急性副鼻腔炎の原因

急性副鼻腔炎は主に以下の原因で発症します。

・風邪などのウイルス感染:最も一般的な原因で、ウイルスによる上気道感染が副鼻腔に波及します。
・細菌感染:肺炎球菌、ブドウ球菌、インフルエンザ菌などによる感染。
・アレルギー性鼻炎:アレルギー反応により鼻粘膜が腫れて、副鼻腔の排出口が塞がれます。

急性副鼻腔炎では、上記の原因により副鼻腔と鼻をつなぐ自然口が塞がれ、副鼻腔内の分泌物や異物を排出できなくなることで炎症が進行します。適切な治療により比較的短期間で改善することが多いですが、治療が不十分な場合は慢性化することがあります。

慢性副鼻腔炎の原因

慢性副鼻腔炎(蓄膿症)は、急性副鼻腔炎が治りきらずに慢性化したものや、以下のような複合的な要因が関与します。

・解剖学的要因:鼻中隔湾曲症や中甲介蜂巣などの鼻腔の形態異常
・アレルギー:ハウスダストや花粉などのアレルゲンによる持続的な炎症
・環境要因:大気汚染、喫煙、乾燥した環境などの外的要因
・免疫機能の低下:長期のストレスや疲労による免疫力低下
・歯の問題:上顎の歯の感染が上顎洞に波及することもあります

慢性副鼻腔炎では、長期間の炎症により副鼻腔粘膜が肥厚し、本来の排出機能が低下するという悪循環が生じます。

好酸球性副鼻腔炎(難治性慢性副鼻腔炎)

近年増加している好酸球性副鼻腔炎は、国の指定難病にも指定されている難治性の慢性副鼻腔炎です。以下の特徴があります。

・好酸球という白血球が多く集まる炎症反応(2型炎症)
・多発性の鼻ポリープ(鼻茸)を伴うことが多い
・嗅覚障害が強く現れる傾向がある
・通常の抗生物質治療に抵抗性を示す
・喘息を合併することが多い
・再発しやすく、治療に難渋する

好酸球性副鼻腔炎の明確な原因はまだ解明されていませんが、免疫系の異常や遺伝的要因が関与していると考えられています。

副鼻腔炎が治ったサインはある?

副鼻腔炎が改善したと判断するサインにはいくつかのポイントがあります。

まず、自覚症状の改善が最も重要です。以下のような変化が見られたら、治癒に向かっていると考えられます。

・鼻水の量が減少し、色や粘り気が改善(透明な鼻水に変化)
・鼻づまりの解消と鼻呼吸の改善
・頭痛や顔面の痛みの軽減または消失
・嗅覚機能の回復
・後鼻漏が減少し、のどの違和感や咳が減る
・全体的な体調や疲労感の改善

医学的な判断としては、以下のような所見が得られた場合に改善と判断されることが多いです。

・内視鏡検査で副鼻腔の開口部の炎症が改善している
・CTやレントゲン検査で副鼻腔内の粘膜肥厚や貯留液の減少が確認できる
・鼻腔通気度検査で空気の流れが改善している

ただし、副鼻腔炎、特に慢性副鼻腔炎の完全な治癒には時間がかかることが多く、症状が一時的に改善しても再発することがあります。好酸球性副鼻腔炎などの難治性のタイプでは、治療後も長期間の経過観察や維持療法が必要な場合があります。

また、疲労時や風邪をひいた際に症状が一時的に悪化することもありますが、これは必ずしも完全な再発ではなく、一過性の悪化であることも多いです。長期的な改善傾向が続いていれば、治療は効果的であると考えられます。

副鼻腔炎の治療法

副鼻腔炎の治療法は、急性か慢性か、また原因や症状の程度によって異なります。主な治療法を紹介します。

薬物療法

薬物療法は副鼻腔炎治療の基本です。

・抗生物質:細菌感染による副鼻腔炎に対して使用されます。急性副鼻腔炎では短期間、慢性副鼻腔炎では「マクロライド療法」と呼ばれる少量長期投与が行われることもあります。

・ステロイド薬:鼻腔内の炎症を抑えるために、点鼻ステロイド薬が使用されます。特に好酸球性副鼻腔炎ではステロイド薬が有効です。重症例では短期間の内服ステロイドが処方されることもあります。

・抗ヒスタミン薬:アレルギー性鼻炎を合併している場合に使用されます。鼻水や鼻づまりを軽減する効果があります。

・粘液溶解薬:鼻や副鼻腔内の粘液を薄めて排出を促進する薬剤です。

局所療法

局所的な治療も重要です。

・鼻洗浄:生理食塩水などで鼻腔内を洗浄し、粘液や異物を排出します。自宅でも実施できる基本的なケアです。

・ネブライザー療法:薬剤を微細な霧状にして鼻から吸入し、副鼻腔まで届けます。抗生物質や消炎剤を使用することが多いです。

・プレッツ置換法:患者の鼻腔内に薬液を注入し、頭の位置を変えながら副鼻腔に薬液を行き渡らせる方法です。

・穿刺洗浄:急性の上顎洞炎で膿が貯留している場合、針を刺して膿を吸引し洗浄する治療法です。現在ではあまり一般的ではありません。

手術療法

保存的治療で効果が得られない場合、手術が検討されます。

・内視鏡下鼻副鼻腔手術(ESS):現在の標準的な手術法で、鼻から内視鏡を挿入して副鼻腔の自然口を広げ、膿や肥厚した粘膜、ポリープを除去します。低侵襲で回復が早い特徴があります。

・バルーン拡張術:比較的新しい治療法で、バルーンカテーテルを用いて副鼻腔の開口部を拡張します。手術よりも侵襲が少ないことが特徴です。

・従来の鼻外手術:重症例や特殊な症例では、外切開によるアプローチが必要になることもあります。

手術は特に慢性副鼻腔炎や好酸球性副鼻腔炎で考慮されますが、手術後も再発予防のための継続的な治療が必要なことが多いです。

副鼻腔炎の鍼灸治療

鍼灸治療は副鼻腔炎に対する補完療法として、世界保健機関(WHO)でも適応疾患として認められています。特に薬物療法との併用で症状改善に効果が期待できます。

鍼灸治療のメカニズム

副鼻腔炎に対する鍼灸治療のメカニズムには以下のようなものがあります。

・局所の血流改善:副鼻腔周辺の血流を促進することで、炎症反応の緩和と治癒促進を図ります。

・免疫機能の調整:鍼灸治療には免疫系を調整する効果があり、過剰な炎症反応を抑える一方で、自然治癒力を高める作用があります。

・自律神経のバランス調整:ストレスなどで乱れた自律神経機能を整え、全身の状態を改善します。

・水毒の改善:東洋医学では、鼻水や鼻づまりは「水毒」(体内に余分な水が溜まった状態)の症状と捉えます。鍼灸はこの水毒を解消し、水分代謝を整える効果があります。

治療のアプローチ

副鼻腔炎に対する鍼灸治療は、主に以下のようなアプローチで行われます。

局所治療: 鼻周辺の経穴(ツボ)に鍼を刺して血流を改善し、副鼻腔の排泄機能を高めます。鼻を囲むように電気鍼通電療法を行うことで、より効果的に鼻の血液循環を促進します。電気鍼の後は、鼻周りの免疫機能を高めるために灸治療を行うこともあります。
全身治療: 頸部や肩の筋肉を緩め、リンパや血液の流れを促進します。特に喉周りの胸鎖乳突筋や斜角筋、肩部や鎖骨周りの治療を重視します。
自律神経調整: 自律神経のバランスを整えることで全身の免疫機能を高め、自然治癒力を向上させます。体内の「水毒」を排出し、適切な水分代謝を促します。

治療の頻度としては、初期は4〜5日に一度のペースで治療を受けることが理想的とされています。症状が改善してきたら徐々に間隔を空けていき、最終的には予防や維持を目的とした月に一度程度の治療に移行していくことが多いです。

副鼻腔炎に効果があるツボは?

副鼻腔炎の症状改善に効果が期待できるツボがいくつかあります。これらのツボを刺激することで、鼻の通りを良くし、炎症を和らげる効果が期待できます。

主な効果的なツボは以下の通りです。

・迎香(げいこう):鼻の脇、鼻翼の外側のくぼみにあるツボ。鼻の通りを良くし、鼻水や鼻づまりを改善する効果があります。

・上迎香(じょうげいこう):迎香の少し上、鼻筋と頬の境目にあるツボ。副鼻腔の通りを良くする効果があります。

・攅竹(さんちく):眉頭の内側端、鼻の付け根にあるツボ。副鼻腔の通りを良くし、痛みを緩和する効果があります。

・印堂(いんどう):両眉の間にあるツボ。蓄膿症や鼻水、鼻づまりの改善に効果があります。

・四白(しはく):目の下、頬骨の下縁にあるツボ。上顎洞炎に効果的とされています。

・合谷(ごうこく):手の甲側、親指と人差し指の付け根の間にあるツボ。鼻炎、アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎などに効果があります。

・天柱(てんちゅう):後頭部の髪の生え際、首の両側にある筋肉の外側のくぼみにあるツボ。鼻や目の症状に効果があります。

・風池(ふうち):後頭部の髪の生え際、首の両側にある筋肉の内側のくぼみにあるツボ。鼻の通りを良くする効果があります。

これらのツボは、指圧やマッサージによるセルフケアも可能ですが、鍼灸師による専門的な治療では、より効果的なアプローチが可能です。特に電気鍼や灸を組み合わせた治療は、単なる指圧よりも深部へ効果が及びます。

ツボ刺激は副鼻腔炎の補助的な治療として効果的ですが、症状が重い場合や長期間続く場合は、まず医療機関での適切な診断と治療を受けることが重要です。また、鍼灸治療を受ける際には、資格を持った専門家による施術を受けるようにしましょう。

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当院では、副鼻腔炎の患者さまの症状や状態を総合的に評価し、適切なプランを提供します。鍼灸治療を含むさまざまなアプローチを用いて、患者さまの症状の緩和や生活の質の向上に努めます。専門的な知識と経験豊富なスタッフが、患者さまの健康をサポートします。まずはお気軽にご相談ください。

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監修者:鍼灸師 キム・ファヨン先生

【得意な治療】
難病全分野、特に突発性難聴・顔面神経痛・顔面神経麻痺・腎疾患・パーキンソン病

西洋医学では対応が難しい難病が得意です。
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