眼精疲労

眼精疲労の症状
眼精疲労は、目を使う作業を続けることによって生じる様々な不快症状の総称です。一時的な疲れ目とは異なり、休息や睡眠をとっても十分に回復しない状態を指します。眼精疲労の症状は目だけでなく、全身にも及ぶことが特徴です。
眼精疲労の主な症状には以下のようなものがあります。
・目の奥が痛む・目がかすむ・ぼやける
・目がしょぼしょぼする
・光がまぶしく感じる
・目が充血する
・ドライアイ(目が乾く感覚)
・まぶたがピクピクする(眼瞼痙攣)
・目の重さや疲労感
これらの症状は、特に長時間のデスクワークやパソコン・スマートフォンの使用など、目を酷使する現代の生活習慣と密接に関連しています。目の周りの筋肉が疲労し、血流が悪くなることで、こうした症状が現れます。
頭痛
眼精疲労に伴う頭痛は非常に一般的な症状です。特に額や目の周り、こめかみなどに痛みが現れることが多く、以下のような特徴があります。
・前頭部の頭痛:まゆの辺りや前頭部に鈍い痛みを感じることがあります。これは、目の焦点を合わせる際に使われる毛様体筋の疲労が原因と考えられています。・側頭部の頭痛:こめかみ周辺の痛みは、眼精疲労に伴う筋肉の緊張が側頭筋にまで及んでいることを示しています。
・後頭部の頭痛:後頭部の痛みは、首や肩のこりと関連していることが多いです。眼精疲労により、不自然な姿勢を長時間続けることで、首や肩の筋肉にも負担がかかり、後頭部の痛みとして現れます。
眼精疲労による頭痛の特徴として、目を使う作業をしている間や後に痛みが増し、休息をとると徐々に軽減することが挙げられます。
眼精疲労の原因
眼精疲労が生じる原因は多岐にわたりますが、主に以下の3つに分類されます。
目の異常
目自体に問題がある場合、眼精疲労が起こりやすくなります。
・視力の問題: 遠視、近視、乱視などが適切に矯正されていない場合、無理してピントを合わせようとして目の筋肉に負担がかかります。・老視(老眼): 40代以降になると、水晶体の弾力性が低下し、近くのものにピントを合わせる能力が低下します。これに対応せずに無理に近くを見続けると眼精疲労の原因となります。
・ドライアイ: 涙の量が減少したり質が低下したりすることで、目の表面が乾燥し、摩擦が増加して眼精疲労を引き起こします。
・その他の目の疾患: 緑内障、白内障、結膜炎などの目の病気も眼精疲労の原因となることがあります。
作業環境
目に負担をかける作業環境も眼精疲労の大きな要因です。
・VDT作業: パソコン、スマートフォン、タブレット等の長時間使用は、現代人の眼精疲労の主要な原因です。画面から発せられるブルーライトや、画面を見続けることでのまばたきの減少が目に負担をかけます。・不適切な照明: 暗すぎる環境や明るすぎる環境、画面への光の反射なども目に負担をかけます。
・空調による乾燥: エアコンの風が直接目に当たると、涙が蒸発して目が乾燥しやすくなります。
全身の要因
体全体の状態も眼精疲労に影響を与えます。
・姿勢の問題: 不適切な姿勢でのパソコン作業などにより、首や肩の筋肉に負担がかかり、血流が悪くなることで眼精疲労が悪化します。・自律神経の乱れ: ストレスや疲労により自律神経のバランスが崩れると、涙の分泌や血流に影響を与え、眼精疲労を引き起こすことがあります。
・全身疾患: 糖尿病、高血圧、貧血、自律神経失調症など、全身の病気も眼精疲労の原因となることがあります。
・栄養不足と睡眠不足: ビタミンB群やビタミンEなどの不足、十分な睡眠がとれないことも眼精疲労に影響します。
眼精疲労のセルフチェック
眼精疲労かどうかを自分で判断するためのセルフチェックリストを以下に示します。該当する項目が多いほど、眼精疲労の可能性が高いと考えられます。
目の症状に関するチェック項目
以下の症状がどの程度あるかチェックしてみましょう。
・□ 目がカサカサした感じに乾く・□ 目の奥に痛みを感じる
・□ まぶたを押すと痛い
・□ 目が充血することがある
・□ 近くを見ていて、急に遠くを見るとぼやける
・□ 物がチラチラして見えることがある
・□ 目をあけていると辛くなる
・□ 新聞などの小さい文字が見えづらい
・□ 涙がよく出る
・□ まぶたがけいれんすることがある
全身症状に関するチェック項目
眼精疲労は全身にも影響を及ぼします。以下の症状がないかチェックしましょう。
・□ よく頭痛を感じる・□ 目を使いすぎると吐き気がする
・□ よくめまいがする
・□ 目が疲れて首や肩がこる
・□ 全身がだるくて疲労感がある
・□ イライラして集中力がなくなった
これらの項目のうち、複数に当てはまる場合は眼精疲労の可能性が高いと考えられます。特に症状が長期間続いている場合や、日常生活に支障をきたすほど重い場合は、眼科医の診察を受けることをお勧めします。
片目だけ眼精疲労になる原因は?
通常、眼精疲労は両目に対称的に現れることが多いですが、場合によっては片方の目だけに症状が出ることもあります。片目だけに眼精疲労の症状が現れる主な原因として、以下のようなものが考えられます。
視力の左右差:左右の目で視力に大きな差がある場合、視力の弱い方の目に過度の負担がかかり、その目だけが疲労することがあります。
調節力の左右差:ピント調節の能力に左右差がある場合も、片目だけが疲れやすくなります。特に老視が始まる40代以降では、調節力の左右差が出やすくなります。
ドライアイの片側性:環境要因(エアコンの風が片側から当たるなど)やまばたきのパターンによって、片方の目だけがドライアイになることがあります。
姿勢や習慣の問題:いつも同じ方向から光が入る環境で作業する、常に同じ側を向いて作業するなど、姿勢や習慣によって片目に負担がかかることもあります。
片目のみの眼疾患:結膜炎や角膜炎など、片目のみに起こっている眼疾患が原因で、その目だけに疲労感が生じることがあります。
片目だけの眼精疲労が続く場合は、単なる疲れではなく、何らかの眼疾患の兆候である可能性もあるため、眼科医の診察を受けることをお勧めします。
眼精疲労のツボ・鍼灸治療
眼精疲労の症状改善には鍼灸治療が効果的であることが多くあります。東洋医学では、目の健康は「肝」と密接に関連していると考えられており、肝機能の疲れや低下が眼精疲労の原因になるとされています。
眼精疲労に効果的なツボ
眼精疲労の緩和に効果があるとされる主なツボには以下のようなものがあります。
太陽(たいよう): こめかみの窪みにあるツボで、眼精疲労の代表的なツボの一つです。目の疲れや頭痛の緩和に効果があるとされています。
攅竹(さんちく): 眉毛の内側の端、鼻根部の両側にあるツボです。眼精疲労や目の充血、頭痛などに効果があるとされています。
晴明(せいめい): 目頭の内側、鼻の付け根にあるツボです。目の充血や痛みに効果があるとされています。
四白(しはく): 眼窩の真下、頬骨の下端にあるツボです。目の充血や痛みに効果があります。
風池(ふうち): 後頭部の付け根、耳の後ろにあるくぼみにあるツボです。頭痛や目の疲れに効果があります。
鍼灸治療の効果
鍼灸治療は以下のようなメカニズムで眼精疲労を緩和すると考えられています。
・目の周囲や頭部の血流改善・目の周りや首、肩の筋肉の緊張緩和
・自律神経のバランス調整
・エンドルフィンなどの分泌によるリラックス効果
特に「後頭下筋群」と呼ばれる筋肉群は目の動きと連動しており、この部分の緊張が眼精疲労の原因となることがあります。この筋群は細かい筋肉の集まりで指圧やマッサージでほぐすことが難しいですが、鍼治療では効果的にアプローチできるという利点があります。
鍼灸治療は薬を使用せずに症状を緩和できる、根本的な原因にアプローチできる、全身のバランスを整えながら治療できるといった特徴があります。ただし、眼精疲労の原因が視力の問題やドライアイなどの場合は、根本的な原因に対する治療も併せて行う必要があります。
眼精疲労について自宅でできるケア・マッサージ
眼精疲労の症状を自宅で緩和するためのケア方法やマッサージ技術を紹介します。日常的に実践することで、眼精疲労の予防や改善に役立ちます。
目の休息と温冷療法
基本的なケアとして、以下の方法が効果的です。
20-20-20ルール: 20分間の作業ごとに、20フィート(約6メートル)先を20秒間見るようにします。これにより、目の筋肉が固定されるのを防ぎ、適度な休息を与えることができます。
温めるケア: 蒸しタオルを目の上に置いて温めることで、血行を促進し、目の疲れを緩和します。40℃程度のタオルを使用し、3〜5分程度行います。特に、帰宅後や就寝前に行うと効果的です。
冷やすケア: 目が充血している場合や、炎症がある場合は冷やすことも効果的です。冷たいタオルやアイスパックを目の上に軽く置きます。
目のセルフマッサージ
目の周りの筋肉をほぐすセルフマッサージは、血行を促進し、眼精疲労を緩和します。
まぶたとその周辺のマッサージ:
・清潔な手で、下まぶた内側から外側に向かって優しくマッサージ・上まぶたも同様に内側から外側へ
・眉間から眉毛に沿って軽く圧をかけながらマッサージ
・こめかみを円を描くようにマッサージ
ツボ押し:
・太陽(こめかみの窪み)・攅竹(眉毛の内側の端)
・晴明(目頭の内側)
・四白(目の下の頬骨の下端)
これらのツボを各5〜10秒ほど押し、数回繰り返します。
目の体操と生活習慣の改善
目の筋肉をほぐし、柔軟性を維持するための体操も効果的です。
眼球運動: 目を大きく開いたまま、上下左右に動かしたり、時計回りと反時計回りに眼球を回したりします。
焦点調節運動: 近くの物と遠くの物を交互に見ることで、毛様体筋の柔軟性を保ちます。
生活習慣の改善:
・十分な水分摂取で目の潤いを保つ・ビタミンA、B群、E、ルテインなどを含む食品の摂取
・質の良い睡眠の確保
・適切な作業環境の整備(照明、画面の位置など)
これらのセルフケアを日常に取り入れることで、眼精疲労の予防や症状の軽減が期待できます。ただし、症状が改善しない場合や悪化する場合は、眼科医の診察を受けることをお勧めします。
眼精疲労を放置するとどうなる?
眼精疲労を放置すると、様々な影響が生じる可能性があります。症状の進行や合併症の発症リスク、そして生活の質への影響について説明します。
症状の悪化と慢性化
眼精疲労を放置すると、症状がさらに悪化し、慢性化する可能性があります。
・一時的だった症状が常時出現するようになる・目の充血や痛み、かすみなどが顕著になる
・休息をとっても改善しなくなる「慢性眼精疲労」の状態になる
・毛様体筋の過度の緊張による「調節緊張」で一時的な視力低下を引き起こす
全身への影響
眼精疲労は目だけでなく、全身にも様々な影響を及ぼします。
・頭痛の頻度と強さの増加・自律神経のバランスの乱れによるめまい、吐き気、不眠
・ストレスや不安、イライラ感の増加
・集中力や記憶力の低下
・不自然な姿勢による首や肩のこり、背中の痛み
合併症のリスク
眼精疲労を放置すると、以下のような合併症のリスクが高まる可能性があります。
・ドライアイの悪化と、それに伴う角膜や結膜の傷・まぶたの筋肉が不随意に収縮する眼瞼痙攣
・毛様体筋の緊張状態による仮性近視
・緑内障や白内障などの眼疾患の発見の遅れ
生活の質への影響
眼精疲労が長期間続くと、生活の質(QOL)に大きな影響を及ぼします。
・仕事や学業のパフォーマンス低下・社交活動や趣味の減少
・抑うつ感や不安感の増大
・睡眠の質の低下と、それによる眼精疲労の悪化という悪循環
眼精疲労を放置せず、早期に適切な対策を講じることが重要です。症状が続く場合は、眼科医の診察を受け、原因を特定して適切な治療を行うことをお勧めします。また、日常生活での予防策や自宅でのケアも積極的に取り入れることで、眼精疲労の悪化を防ぐことができます。
お気軽にご相談ください
当院では、眼精疲労の患者さまの症状や状態を総合的に評価し、適切なプランを提供します。鍼灸治療を含むさまざまなアプローチを用いて、患者さまの症状の緩和や生活の質の向上に努めます。専門的な知識と経験豊富なスタッフが、患者さまの健康をサポートします。まずはお気軽にご相談ください。
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