花粉症

花粉症

花粉症の症状

花粉症は、植物の花粉が鼻や目などの粘膜に接触することによって引き起こされるI型アレルギー反応です。花粉症の主な症状は「3大症状」と呼ばれる鼻の症状と、目の症状が特徴的です。

鼻の症状としては、以下の3つが代表的です。
・水のような「鼻水」(さらさらした鼻水が止まらない)
・繰り返す「くしゃみ」(連続して何回もくしゃみが出る)
・「鼻づまり」(鼻が詰まって呼吸がしづらくなる)

目の症状としては主に以下が挙げられます。
・目のかゆみ(目をこすりたくなるような強いかゆみ)
・目の充血(目が赤くなる)
・涙が出る(目が痛くなるほどの流涙)

これらの症状は、花粉の飛散量に比例して強くなる傾向があります。特に花粉の飛散量が多い時期には、症状が重くなり日常生活に支障をきたすことも少なくありません。鼻づまりによって呼吸がしづらくなると、集中力の低下や睡眠障害を引き起こし、仕事や勉強、家事などに悪影響を及ぼすことがあります。

また、花粉症の方の中には、果物や生野菜を食べた後に口の中や喉にかゆみやしびれ、むくみなどの症状が現れることがあります。これは「花粉-食物アレルギー症候群」と呼ばれ、花粉のアレルゲンと果物や野菜に含まれるアレルゲンが似ているために起こる交差反応によるものです。

Ⅰ . 花粉症とは

スギ花粉症について日常生活でできること

花粉症の種類

花粉症は原因となる植物の種類によって様々なタイプに分けられます。日本では特に以下の植物による花粉症が多く見られます。

スギ花粉症は、日本人の花粉症の約70%を占める最も一般的なタイプです。スギ花粉は主に2月から5月にかけて飛散し、3月にピークを迎えます。日本の森林の18%、国土の12%をスギが占めているため、特に関東や東海地方で多く見られます。

ヒノキ花粉症は、スギの次に多いタイプで、特に関西地方ではスギと並んで植林面積が広いため、注意が必要です。ヒノキ花粉はスギよりも少し遅れて飛び始め、4月にピークを迎え、6月くらいまで飛散します。

シラカンバ花粉症は、北海道など寒冷地に多いタイプです。シラカンバ属(カバノキ科)の花粉は5~6月にかけて飛散します。

イネ科花粉症は、北海道では6~9月に飛散しますが、本州以西ではほぼ1年を通して花粉が飛散するため、長期間症状に悩まされることがあります。

キク科花粉症は、秋の花粉症としてよく知られています。キク科のブタクサ属やヨモギ属、クワ科のカナムグラなどの花粉が8~10月に飛散します。

地域によって主要な花粉の種類や飛散時期は異なるため、居住地域の花粉カレンダーを確認し、自分がどの花粉に反応するのかを把握することが重要です。

花粉症の原因

花粉症は、本来無害な花粉に対して体の免疫システムが過剰に反応することで発症します。その詳細なメカニズムと様々な要因について解説します。

免疫学的メカニズム

花粉症は、I型アレルギー反応の一種です。この反応は以下のような流れで起こります。

花粉に含まれるタンパク質(アレルゲン)が体内に入る
体内で抗体(IgE抗体)が生成される
再び同じアレルゲンに接触すると、IgE抗体と結合する
肥満細胞や好塩基球からヒスタミンなどの化学物質が放出される
これらの化学物質が鼻や目の粘膜に炎症を引き起こし、症状が現れる

環境的要因

花粉症の発症や症状の悪化には、環境的な要因も大きく関わっています。

・花粉の飛散量:天候や気温によって花粉の飛散量が変化します。特に晴れた日や風の強い日には花粉が多く飛散するため、症状も強くなりやすいです。

・大気汚染:排気ガスなどの大気汚染物質が花粉のアレルゲン性を高めたり、粘膜のバリア機能を低下させたりすることで、症状を悪化させる可能性があります。

・生活環境:室内の湿度が低い環境では粘膜が乾燥しやすく、花粉の刺激を受けやすくなります。また、ストレスの多い生活も免疫系のバランスを崩し、アレルギー反応を助長することがあります。

遺伝的要因

花粉症には遺伝的な要素も関わっています。

・家族歴:両親のどちらかが花粉症である場合、子どもが花粉症になるリスクは約40%と言われています。両親とも花粉症の場合は、そのリスクはさらに高まります。

・アトピー素因:アトピー性皮膚炎や気管支喘息などのアレルギー疾患を持つ人は、花粉症を発症しやすい傾向があります。

東洋医学的視点

東洋医学では、花粉症を以下のように捉えています。

・体質的要因:花粉症を含むアレルギー疾患を持つ方は、冷え性、胃腸虚弱、月経不順などの体質的な症状を抱えていることが多く、これを「虚証」と呼びます。

・水毒:体内に余分な水分が溜まり、うまく排泄できない状態を「水毒」と呼び、これが鼻水や鼻づまりなどの症状を引き起こすとされています。

・熱の停滞:体の中の水と熱、暖かくなる大気の熱がぶつかり、頭部や顔面部に停滞することでも発症すると考えられています。

花粉症は単一の原因ではなく、これらの様々な要因が複合的に影響し合って発症・悪化するものと考えられています。

花粉症を和らげる食べ物はある?

花粉症の症状を和らげるのに役立つとされる食品があります。これらは免疫力を調整したり、アレルギー反応を抑制したりする効果があると考えられています。

抗炎症作用のある食品は、体内の炎症反応を抑える効果が期待できます。
・オメガ3脂肪酸を含む食品(青魚、亜麻仁油、くるみなど)
・ビタミンCが豊富な食品(柑橘類、キウイ、いちご、ブロッコリーなど)
・ビタミンEを含む食品(アーモンド、ひまわり種子、アボカドなど)
・ケルセチンを含む食品(たまねぎ、りんご、ブロッコリー、緑茶など)

また、腸内環境を整え、免疫機能を正常化するのに役立つ食品もあります。
・発酵食品(納豆、キムチ、ヨーグルト、味噌など)
・食物繊維が豊富な食品(海藻、きのこ類、全粒穀物など)

東洋医学的な観点からは、体内の「水毒」を改善し、免疫力を高めるための食品が推奨されています。
・マグネシウムを含む食品(緑黄色野菜、ナッツ類など)
・ビタミンB2を含む食品(レバー、卵、乳製品など)
・カルシウムを含む食品(小魚、乳製品、緑黄色野菜など)

ただし、花粉と交差反応を起こす食べ物には注意が必要です。例えば、スギ花粉症の方はトマトやキウイ、リンゴなどで口腔アレルギー症候群を起こすことがあります。シラカンバ花粉症の方はリンゴ、サクランボ、モモ、ナシなどで症状が出ることがあります。

食事による対策は補助的なものであり、重度の花粉症の場合は医師の診察を受け、適切な治療を行うことが重要です。また、個人によって効果は異なるため、自分に合った食品を見つけることが大切です。

花粉症の治療法

花粉症の治療法は多岐にわたり、症状の程度や個人の状況に応じて選択されます。主な治療法としては、「薬物療法」「アレルゲン免疫療法」「手術療法」の3つがあります。また、花粉を回避するための環境整備も重要です。

薬物療法

薬物療法は最も一般的な治療法で、様々な種類の薬が使われます。

・抗ヒスタミン薬:ヒスタミンの作用を抑え、くしゃみや鼻水、目のかゆみなどの症状を緩和します。従来の抗ヒスタミン薬は眠気などの副作用がありましたが、近年は眠気の出にくい薬も開発されています。

・点鼻ステロイド薬:鼻の炎症を抑える効果があり、特に鼻づまりに効果的です。局所的に作用するため、全身への副作用が少ないのが特徴です。

・ロイコトリエン受容体拮抗薬:ロイコトリエンという炎症物質の作用を阻害し、特に鼻づまりの改善に効果があります。

・点眼薬:目の症状には、メディエーター遊離抑制薬や抗ヒスタミン薬の点眼薬が用いられます。症状が悪化した場合は、点眼ステロイド薬が使用されることもありますが、眼圧上昇などの副作用を確認するために定期的な検査が必要です。

アレルゲン免疫療法

アレルゲン免疫療法(減感作療法)は、原因となるアレルゲンを少量ずつ投与して、体のアレルギー反応を弱める治療法です。

・舌下免疫療法:舌の下にアレルゲンを含む錠剤を置き、吸収させる方法です。日本ではスギ花粉とダニに対する治療が保険適用となっています。

・皮下免疫療法:アレルゲンを皮下に注射する方法です。一定の間隔で継続的に治療を受ける必要があります。

免疫療法は数年以上の長期的な治療が必要ですが、薬物療法では副作用が出る患者さんや、薬物療法だけでは症状が抑えられない患者さんに効果が期待できます。

手術療法

手術療法は、薬物療法でも症状が抑えられない場合に考慮される治療法です。

・下鼻甲介粘膜焼灼術:鼻の粘膜をレーザーで凝固し、鼻づまりを改善する方法です。

初期療法の重要性

花粉症は、症状が悪化すると薬の効果が得られにくくなるため、「初期療法」が推奨されています。これは、花粉の本格飛散が始まる前、または症状が少しでも現れた時点で薬の使用を開始する方法です。早めに治療を始めることで、花粉飛散量が多い時期でも症状をコントロールしやすくなります。

日常生活での対策

薬物療法と並行して、以下のような日常生活での対策も重要です。

・花粉情報のチェック:花粉飛散予測を確認し、外出計画を立てましょう。
・適切な服装:帽子、マスク、メガネなどで花粉の付着を防ぎます。
・帰宅後のケア:外出後は玄関先で花粉を払い、着替えや洗顔をして花粉を除去します。
・室内の環境整備:空気清浄機の使用や、窓を閉めるなどして室内への花粉の侵入を防ぎます。

これらの治療法と対策を組み合わせることで、花粉症の症状を効果的に管理し、快適な日常生活を送ることができます。症状が重い場合は、医師に相談し、適切な治療法を選択することが大切です。

花粉症の鍼灸治療

鍼灸治療は、花粉症の症状緩和に対する補完療法として効果が期待されています。特に薬の副作用が気になる方や、より自然な治療法を求める方に選ばれています。

鍼灸治療のメカニズム

鍼灸治療が花粉症に効果を発揮するメカニズムは主に以下の2つが考えられています。

化学物質による効果: 鍼を打つと皮膚や筋肉に微細な傷ができ、その傷から化学物質が放出されます。これにより血管が拡張し、血液の流れが改善します。血流が促進されることで細胞に酸素や栄養が供給され、局所の炎症反応が緩和されます。

反射による効果: 鍼灸治療では「体性-内臓反射」と呼ばれる現象を利用します。皮膚や筋肉に刺激を与えることで、自律神経を介して内臓機能を調整し、免疫系のバランスを整えます。これにより、アレルギー反応が抑制されると考えられています。

東洋医学的アプローチ

東洋医学の観点からは、花粉症の治療は以下のようなアプローチで行われます。

「虚証」の改善: 花粉症患者には「虚証」と呼ばれる体質的な弱さがあるとされています。鍼灸治療では、この体質を改善するために全身のバランスを整える治療が行われます。

水毒の解消: 東洋医学では鼻水や鼻づまりは「水毒」(体内に余分な水が溜まった状態)の症状と考えられています。鍼灸治療によってこの水毒を解消し、水分代謝を整えることが目指されます。

扁桃の慢性炎症の抑制: 扁桃はのどや舌の根本にあるリンパ器官で、免疫機能に関わる重要な臓器です。花粉症治療においては、扁桃の慢性炎症を抑えることが重要視されています。

治療のタイミングと頻度

花粉症の鍼灸治療は、花粉が飛び始める4週間前から開始するのが効果的とされています。これは、あらかじめ体の免疫力を向上させ、IgE抗体の生産を抑制することを目的としています。

治療頻度は症状の程度によって異なりますが、初期は4〜5日に一度のペースが理想的です。症状が改善してきたら徐々に間隔を空けていき、最終的には予防や維持を目的とした月に一度程度の治療に移行することが多いです。

重度の花粉症の場合でも、2〜3回の治療で症状が改善することがありますが、体質改善のためには数カ月〜数年の継続的な治療が必要な場合もあります。

花粉症に効果があるツボは?

花粉症の症状緩和に効果的なツボがいくつかあります。これらのツボを刺激することで、くしゃみ、鼻水、目のかゆみなどの症状を軽減する効果が期待できます。

顔面部のツボは特に即効性があり、局所的な症状緩和に役立ちます。

・上星(じょうせい):顔の真ん中で髪の生え際から少し上にあるツボです。鼻づまりや目の充血に効果があります。

・印堂(いんどう):両眉の中央にあるツボです。さらさらした鼻水の改善に効果があります。

・攅竹(さんちく):眉毛の内側にあるツボです。目のかゆみ、目のかすみ、涙などの症状に効果的です。

・睛明(せいめい):目頭と鼻骨の間にあるツボです。目のかゆみ、鼻水、鼻づまりの改善に役立ちます。

・承泣(しょうきゅう):目の下にあるツボです。目のかゆみや目の充血に効果があります。

・鼻通(びつう):迎香の少し上、鼻筋と頬の境目にあるツボです。くしゃみ、鼻水、鼻づまりに効果的です。

・迎香(げいこう):小鼻の両脇にあるツボです。くしゃみ、鼻水、鼻づまりの改善に効果があります。

また、全身のバランスを整え、免疫力を高めるためのツボもあります。

・合谷(ごうこく):手の甲側、親指と人差し指の付け根の間にあるツボです。首から上の症状全般、特に鼻水、鼻づまり、目のかゆみ、目の充血に効果があります。

・天枢(てんすう):おへその横にあるツボです。腸の働きを整え、免疫力を高める効果があります。

・大巨(だいこ):おへその下にあるツボです。天枢と同様に腸の働きを整え、免疫力を高めます。

これらのツボは、専門の鍼灸師による治療が最も効果的ですが、自分でやさしく押すセルフケアも補助的な効果が期待できます。ただし、症状が重い場合や、ツボ押しだけでは効果が得られない場合は、医療機関での適切な治療を受けることをお勧めします。

花粉症の症状は人によって異なり、効果のあるツボも個人差があります。また、鍼灸治療は即効性のあるツボを使った局所的な治療と、体質改善のための全身的な治療を組み合わせることで、より効果的な結果が得られます。

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当院では、花粉症の患者さまの症状や状態を総合的に評価し、適切なプランを提供します。鍼灸治療を含むさまざまなアプローチを用いて、患者さまの症状の緩和や生活の質の向上に努めます。専門的な知識と経験豊富なスタッフが、患者さまの健康をサポートします。まずはお気軽にご相談ください。

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監修者:鍼灸師 キム・ファヨン先生

【得意な治療】
難病全分野、特に突発性難聴・顔面神経痛・顔面神経麻痺・腎疾患・パーキンソン病

西洋医学では対応が難しい難病が得意です。
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